シフト管理に90分とられていませんか。飲食・小売の「LINEシフト」で効率化!

毎週の決まった時間、パソコンの前でシフト表とにらめっこしていませんか。届いた希望は、LINEの個別トーク、口頭のメモ、休憩室の壁に貼った紙。バラバラに集まったそれを、1つの表に手で書き写していく。「この人は木曜が入れない」「この日は誰も入っていない」と、消しゴムで何度も直す。気づけば90分が過ぎています。

そして完成したはずの表を貼り出した翌日、「すみません、その日やっぱり無理でした」と言われる。また組み直しです。飲食店や小売店で、この作業を毎週やっている店長は少なくありません。

この90分は、LINEに乗せると大きく減らせます。ただし、時間を減らすことだけを考えて設計すると、後で別のトラブルを呼び込みます。シフトには、労働時間や賃金に直結する法律の論点が隠れているからです。この記事では、集める手間を減らす方法と、外してはいけない線を、両方まとめて整理します。

なぜ、シフト作りに毎週90分かかるのか

時間がかかるのは、店長の段取りが悪いからではありません。希望が「バラバラの形」で、「バラバラの場所」に届くからです。

ある人はLINEで「来週水曜休みたいです」と送ってくる。ある人は口頭で「木曜の夜は入れます」と言う。ある人は紙に書いて置いていく。形式がそろっていないので、店長はまず全部を頭の中で同じ形に翻訳し、それから1つの表に書き写します。この「翻訳して転記する」ところに、時間の大半が溶けています。

飲食・小売で、とくに崩れやすい理由

飲食店や小売店のシフトには、他の業種にない難しさがあります。

  • 人数が多く、入れ替わりが早い。学生アルバイトが多い店では、テスト期間や卒業で希望が毎月動きます。
  • 時間帯で必要人数が変わる。ランチのピーク、アイドルタイム、ディナー。同じ日でも、埋めたい枠が時間ごとに違います。
  • 直前の変更が多い。体調不良や急な用事で、貼り出した後に穴が空きます。その穴を埋める連絡が、また個別に飛び交います。

集める・組む・直す。この3つが全部、手作業と口頭で回っているのが、90分の正体です。

大手のシフトシステムを、そのまま入れなくていい

「きちんとやるなら専用のシフト管理システムを」と考えると、多機能なサービスが並びます。自動でシフトを組み、人件費を計算し、給与ソフトと連携する。魅力的ですが、月額の費用がかかり、全員に新しいアプリを入れてもらう必要があります。アルバイトの入れ替わりが早い店ほど、この「新しいアプリを覚えてもらう」が重い負担になります。

小さな店が最初に手をつけるべきは、多機能化ではありません。いちばん時間を食っている一点、つまり「希望を集めるところ」だけを、まず片付けることです。狭い範囲に力を集める、ランチェスターの弱者の戦略が効きます。

弱者の原則シフト管理での意味具体的な打ち手
局地戦作業範囲を狭く区切る「希望の収集」だけをLINE化する。自動で組む・人件費計算は後回し
一点集中形式を1つに固定する希望の出し方を「決まった書式」に統一し、翻訳の手間を消す
接近戦すでにある道具を使う全員が使い慣れたLINEで完結させ、新しいアプリを覚えさせない
差別化大手と同じ土俵に乗らない大手は専用システムで一律に。小さな店は今週から書式を1枚配って始める

仕組み化する業務を選ぶ基準は3つです。①頻度が高い ②店長が対応している ③やることが毎回ほぼ同じ。シフトの希望集めは、毎週発生し、必ず店長がやり、作業内容は毎回同じ。最初の一点として、これ以上ないほど条件がそろっています。

LINEで「集める」を仕組みにする

やることは3つです。集める形をそろえる、集める場所を1つにする、集めた後は転記しなくていい形にする。

希望の書式を固定する

自由記述をやめて、決まった形で送ってもらいます。これだけで、翻訳の手間が消えます。

【シフト希望テンプレート】

①氏名:
②対象の週:◯月◯日の週
③入れる日と時間帯:(例)月・水の夕方/土日は終日
④入れない日:(例)金曜は不可
⑤希望の合計コマ数:週◯コマくらい

ポイントは⑤です。「入れる日」だけ聞くと、店側が全部の枠に入れてしまい、「そんなに入れたくなかった」というズレが起きます。本人が希望する量を先に聞いておくと、後のトラブルが減ります。

集める場所を1つにする

個別トーク、口頭、紙が混在している状態をやめ、送り先を1本にします。店の公式アカウントに送ってもらう、あるいは希望収集用のフォームを1つ用意する。「シフト希望はここだけ」と決めることが、バラバラを解消する最初の一歩です。

集めた後、転記しない形にする

いちばん効くのはここです。LINEで集めた希望が、そのままスプレッドシートの1行になる形にすると、手で書き写す作業そのものがなくなります。フォームやエルメのようなツールを使えば、送信された内容が自動で表に並びます。店長は並んだ表を見て、埋める作業だけに集中できます。

やりたいことLINE公式アカウント単体外部ツールを併用
決まった書式で希望を送ってもらうできる(定型文の案内)できる(フォーム)
送り先を1本にまとめるできるできる
集めた希望を自動で表に並べる難しいできる
確定したシフトを個別に配信するできる(一斉/個別配信)できる

集めるところまでは公式アカウント単体でも始められます。表への自動転記まで求める段階で、外部ツールの検討に入る、という順番です。自動化の具体的な設定は姉妹サイトで扱っていますが、この記事では「何を集め、どこで線を引くか」に絞ります。

たとえば、スタッフ18人のカフェでは

週のシフト希望は、LINEの個別トーク・口頭・紙が入り混じっていました。店長は毎週日曜の夜に90分かけて集計し、貼り出していました。

希望をテンプレート化して送り先を1本にまとめ、フォームから表に自動で並ぶ形に変えたところ、集計にかかる時間が90分から30分程度に減りました。空欄で残った枠だけを見て埋められるようになったためです。あくまで一例で、店舗の規模や希望の出方によって変わります。(これは説明のための仮定の例です)

見落とすとトラブルになるポイント

ここからが本題です。シフトは「早く組む」だけの話ではありません。組み方・伝え方・変え方に、法律が関わってきます。

「シフトによる」とだけ書いた契約書は、足りません

シフト制で働いてもらう場合でも、労働条件の明示は必要です(労働基準法15条1項、同法施行規則5条)。ここで、厚生労働省の「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」が示している考え方が重要になります。

◆ 契約書に「シフトによる」だけでは不十分です

この留意事項では、始業・終業時刻について、労働条件通知書等に単に「シフトによる」と記載するだけでは足りないとされています。求められるのは、次のいずれかの対応です。

  • 労働日ごとの始業・終業時刻を明記する方法
  • 原則的な始業・終業時刻を記載したうえで、契約と同時に定める一定期間分のシフト表をあわせて交付する方法

契約の時点ですでに勤務日が決まっている日があれば、その日については具体的な時刻を示す必要があります。「全部シフトで決めるから契約書は空欄」という形は、後で「聞いていた条件と違う」という争いの入口になります。

この留意事項は行政通達であり、告示や指針ではありません。ただ、労働条件をはっきりさせておくことは、店を守ることにもつながります。労働条件の明示や書類の渡し方そのものは、入社手続きの「あの書類まだ?」をなくすで整理しています。

会社が一方的にシフトを決めるのは、望ましくないとされています

同じ留意事項では、労使双方の予見可能性を高め、紛争を防ぐ観点から、使用者が一方的にシフトを決めることは望ましくなく、シフトの決定に関するルールを、話し合って定めておくことが考えられるとされています。就業規則等で一律に定めておくことも可能です。

ここでLINEが効いてきます。希望を決まった書式で集め、その記録が残る形にしておくと、「本人の希望を聞いたうえで決めた」というプロセス自体が残ります。集める仕組みが、そのまま『一方的に決めていない』証拠になるわけです。効率化のために作った仕組みが、法令上望ましいとされる進め方にも沿う形になります。

いちばん注意すべきは「勝手にシフトを減らす」ことです

飲食・小売でとくに問題になりやすいのが、暇な日に店の都合でシフトを削ることです。ここには賃金の論点があります。

◆ 会社都合のシフト削減には、休業手当が要ることがあります

いったん確定したシフトを、店側の都合で一方的に削って働けなくした場合、それが「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたると、労働基準法26条により、その時間について平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が生じることがあります。

「客が少ないから今日はもう上がって」も、状況によってはこれに該当しえます。売上の減少や客足の落ち込みは、経営上の判断に起因するもので、天災のような不可抗力とは区別して考えられる傾向があります。休業手当の対象は正社員に限られず、パート・アルバイトも労働者である以上、対象になりえます。

確定したシフトを、その日の忙しさで軽い気持ちで削っていると、後からまとめて請求される、ということが起こりえます。

実際に休業手当が必要になるかどうかは、シフトがどこまで確定していたか、削減の理由が何かによって変わり、個別の判断が必要です。ここで大事なのは、「確定したシフトを店都合で削るのは、ただの調整ではなくコストが伴う判断だ」と知っておくことです。知っていれば、確定のタイミングや削減のルールを先に決めておけます。

集めた希望と確定シフトは、記録として残す

シフト表は、誰がいつ働いたかを示す資料の一部になります。労働時間の記録に関する書類は、労働基準法109条により保存が求められ、保存期間は5年(同法143条の経過措置により当分の間は3年)とされています。LINEで集めた希望のトークだけに頼らず、確定したシフトを表の形で残してください。労働時間の記録としてどこまで使えるかは、LINEで勤怠打刻はアリか、労働時間の記録として認められる条件で扱っています。

最小構成で始める3ステップ

1

希望の書式を1枚作って、送り先を1本にする。氏名・対象の週・入れる日と時間帯・入れない日・希望コマ数。この5項目を定型文にして、「シフト希望はここに、この形で」と一度だけ全員に伝えます。作るのは一度きりです。

2

締め切りと確定日を、数字で決める。「毎週◯曜までに希望、◯曜に確定シフトを配信」と固定します。ここを曖昧にすると、直前の希望変更が止まりません。確定日を決めることは、シフト削減の休業手当の問題を避けるうえでも効きます。

3

確定したシフトを、表の形で残す。配信して終わりにせず、確定シフトをスプレッドシートなどに残します。これが労働時間の記録の土台になり、後の給与計算やトラブル対応で効いてきます。

自動で表に並べる、自動でリマインドする、といった自動化は後からで間に合います。まず「書式をそろえて、送り先を1つにする」だけで、90分はかなり縮みます。

よくある失敗

失敗1:自由記述のまま集める
「来週の希望ください」とだけ伝えると、返ってくる形がバラバラで、結局また翻訳と転記が発生します。書式を固定しないと、LINEに移しても時間は減りません。

失敗2:全員が入った大きなグループで希望を集める
他の人の希望が全員に見え、「あの人が入るなら自分は休もう」という探り合いが始まります。希望の収集は、フォームか個別で受けるのが基本です。

失敗3:確定したシフトを、当日に店都合で削る
暇だからと軽い気持ちで上がってもらうと、休業手当の問題になりえます。削減のルールと確定のタイミングを、先に決めておいてください。

よくある質問

シフト制でも、雇用契約書は必要ですか

必要です。シフト制であっても労働条件の明示義務はあります。始業・終業時刻について「シフトによる」とだけ書くのでは足りず、原則的な時刻を示したうえでシフト表を交付するなどの対応が求められます。契約時にすでに決まっている勤務日があれば、その日の時刻は具体的に示します。

希望どおりにシフトを入れられないときは、どうすればいいですか

希望はあくまで希望であり、すべてに応える義務まではありません。ただし、決め方のルールを事前に共有し、なぜその配分になったのかを説明できる状態にしておくことが望ましいとされています。書式で希望を集めておくと、この説明がしやすくなります。

急に休みが出た穴を、LINEで募集してもいいですか

構いません。「◯日の夕方、入れる方いますか」と募る使い方は、LINEの得意な場面です。ただし、応じるかどうかは本人の任意です。応じることを事実上強制するような形にならないよう気をつけてください。

まとめ

この記事の結論

  • シフト作りの90分の正体は「バラバラの形が、バラバラの場所に届く」こと。書式をそろえ、送り先を1本にするだけで大きく減ります
  • 契約書に「シフトによる」とだけ書くのは不十分。原則的な時刻を示し、シフト表を交付する形にします
  • 確定したシフトを店都合で削ると、休業手当(平均賃金の60%以上)が必要になることがあります
  • 明日やること:シフト希望の書式を1枚作り、送り先を1本にする

集める仕組みができると、次に効いてくるのは、確定したシフトと実際の勤務時間をどうつなぐかです。シフトどおりに働いたか、ずれたかを記録に残すところまで整うと、シフトが給与計算の土台になります。

本記事は2026年9月時点の情報に基づいています。シフト制の労働条件明示、シフト削減時の休業手当の要否は、契約内容や個別の事情によって扱いが変わります。「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」は行政通達であり、告示・指針ではありません。判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署などにご確認ください。